文学的「今日は何の日?」【10/26~11/1】
あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
10月26日から始まる1週間を見てみましょう。
10月26日
正岡子規が「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」の句を詠む
日清戦争では自ら志願して、記者として従軍していた正岡子規。しかし、明治28年に終戦を迎えて帰国する途中の船上で喀血、しばらく神戸で入院生活を送ったのちに故郷の愛媛県松山市に帰ります。同市の中学校で教師をしていた夏目漱石の元で2か月近くを過ごしたのちに東京へ向かい、その途中10月26日~29日の4日間、奈良に滞在しました。このときに詠んだ句が、子規の代表作のひとつとして知られる「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」です。この句が元となって、全国果樹研究連合会・カキ部会が10月26日を「柿の日」に指定しています。
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4480425705/
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10月27日
男性作家ニールが、女性作家ナオミに助言を求める手紙を書く――ナオミ・オルダーマン『パワー』
女性たちが手から強力な電流を発する能力を獲得し、男女の力関係が逆転した社会を描くディストピア小説『パワー』(ナオミ・オルダーマン作)。女性のなかには好き放題に男性を殺したり、レイプしたりする者も現れます。これまで女性が被ってきた性差別を、男性が被る社会なのです。そんな社会に生きる男性作家ニールは、男女の力関係が逆転した男性優位社会を歴史小説『パワー』で描き、10月27日に女性作家ナオミに宛てて原稿を送って助言を求めるのでした。オルダーマンは世界的時計メーカー・ロレックスのプログラム「ロレックス メントー&プロトジェ アート・イニシアチヴ」を通じて『侍女の物語』のマーガレット・アトウッドの指導を受けた「プロトジェ(弟子)」です。
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4309207553/
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10月28日
1万7000名あまりの死傷者を出した濃尾地震が発生する
明治24年10月28日の6時38分頃、美濃・尾張(現在の岐阜県南部と愛知県西部)をマグニチュード8.0の巨大地震が襲いました。被災地の旧国名から「濃尾地震」と名づけられます。芥川龍之介の短編小説「疑惑」はこの濃尾地震で妻を失った男性・中村玄道の物語。地震が起きたとき、玄道は井戸端に、妻・小夜は台所にいました。これが2人の運命を分けます。突如起きた地震で家は倒壊し、小夜は梁の下敷きになってしまいました。妻を救出しようと躍起になる玄道ですが、梁はびくとも動きません。やがて火災が発生し、火の手が2人に迫ってきます。生きながら焼き殺される運命にある小夜を見かねた玄道は、落ちている瓦を取り上げ……。
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4480020837/
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10月29日
「帝国日本芸人一座」が欧米巡業に出発――安岡章太郎『大世紀末サーカス』
一般人が外国へ行くことなどほとんど考えられなかった幕末の慶応2年10月29日、なんと曲芸師の一団「帝国日本芸人一座」が日本を飛び出し、およそ3年にわたり欧米を巡業していました。この一座の後見人として同行した高野広八なる人物の日記をもとに、安岡章太郎が数々の文献を調べて書き上げたのが、小説『大世紀末サーカス』。一座は巡業先で熱烈な歓迎を受け、アメリカ大統領アンドリュー・ジョンソンとの握手や、徳川慶喜の弟・昭武との対面、ヴィクトリア女王の観覧など、望外の栄誉に包まれますが、その一方で、夜の街では痛い目に遭うことも。ですが、言葉や文化の異なる欧米での興行をやり切った、旅芸人の逞しさ、したたかさに舌を巻くこと請け合いの一作です。
出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09352304
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10月30日
オーソン・ウェルズのラジオドラマ『宇宙戦争』で全米がパニックに
1938年、アメリカの俳優オーソン・ウェルズはCBSラジオで短編ドラマの番組『マーキュリー劇場』に起用されました。10月30日の放送で彼が取り上げたのが、H.G.ウェルズの『宇宙戦争』。19世紀のイギリスを舞台としていた原作を、ドラマでは現代のアメリカに舞台を変え、音楽番組の途中に臨時ニュースとして割り込む演出をし、目撃者として登場したオーソン・ウェルズの迫真の演技もあって火星人侵略を本当の出来事と思い込み、全米がパニックに陥ったといわれます。H.G.ウェルズの原作には火星人を指して「タコみてえだな」という記述もあり、火星人のイメージを決定づけた作品としても知られています。
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4042703070/
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10月31日
恩田陸『黄昏の百合の骨』で理瀬のおばが読む手紙の日付
主人公・水野理瀬の成長を描く恩田陸の人気作「理瀬シリーズ」。『黄昏の百合の骨』の舞台は、理瀬がかつて祖母や従兄弟たちと暮らしていた坂の多い街。この街の白百合荘と呼ばれる洋館で、理瀬の祖母が転落して亡くなったのです。祖母の死はただの事故なのか、それとも……? 真相を突き止めるべく白百合荘に乗り込む理瀬を待っていたのは、彼女の義理のおばにあたる、梨南子と梨耶子姉妹。ある晩、梨南子は「いろいろなことがわかってくるわ」と、母に宛てて送られた手紙の束に目を通していました。10月31日付けのある手紙には「Rが何を考えているのか、私にはどうしてもよく分からない」の言葉が。Rとは理瀬? 梨南子と梨耶子? いったい誰を指すのでしょうか?
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文学的「今日は何の日?」【4/27~5/3】
11月1日
吉原遊郭が装いも新たに営業を再開――朝井まかて『落花狼藉』
慶長8年に幕府が開かれると、それまで一地方都市に過ぎなかった江戸は日本の中心地となり、にわかに活気づきます。江戸詰めの武士や職人など、多くの男性が流入し、人口の3分の2を男性が占めるまでになりました。そこに目をつけ、幕府に遊郭創設を願い出たのが、吉原の創設者となる庄司甚右衛門。朝井まかての『落花狼藉』は、彼の妻・
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4575241997/
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初出:P+D MAGAZINE(2020/10/26)