沖田臥竜

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ムショぼけ
著/沖田臥竜発売日:2021-09-07

「なぜ泣くのだ」狂っているのは俺か世界か

 大阪刑務所の門の前に、40過ぎの男がひとり立っていた。陣内宗介、元ヤクザ。14年ぶりのシャバだ。ジギリ(組のために身体を張ること)で銃を握って長期服役したのに、5000万円の見返りどころか、組を破門になった。妻も子供も離れていった。絵に描いたような、社会のおちこぼれだ。陣内は還暦すぎたオカンと2人暮らしを始め、カタギになった元若頭の内装屋で仕事を始める。ユーチューバーになって調子こいている元舎弟を呼び出してドヤしつけると、元舎弟にメッセージが届いた。「その人、私の父かもしれません」。メッセージの送り主は、14年会っていなかった娘だった――長期服役によって「拘禁症」(いわゆるムショぼけ)に悩まされる男が、ヤクザとカタギと家族と仲間と一緒になって、怒って、ヘコんで、笑って、泣いて、まっすぐに、兵庫・尼崎の夏を駆け抜ける。狂っているのは、俺なのか、世界なのか。

小学館文庫シリーズ