佐々木裕一

同心は岡っ引きの過去と向き合わねばならぬ

  岡っ引きになる前の五六蔵を手助けしていた伊蔵が浪人の姿をして現れた。かつて仲間であった三治が殺されたので、急ぎ報せに上方から戻ってきたと言う。下手人は五六蔵に底無しの恨みを抱く殺し屋…

この闇夜の中、必殺剣を振るうのは誰だ!?

 海産物を扱う磯屋の主・周三郎が殺された。早速探索をはじめた定町廻り同心の夏木慎吾。どうやら周三郎は深川に持っている蛸壺長屋の売買で揉めていたらしい。新吉原の福満屋右兵衛が長屋を取り壊し…

弱った心を踏みにじる奴はこの刀が許さねえ

 最近、町人を騒がせている盗賊一味――笹山の閻僧。定町廻り同心の夏木慎吾は、ここひと月ばかり奴らを追うのに必死で、奉行所で寝泊まりすることも多い。つい先日押し込まれた漆問屋では、女子供ま…

この男のお縄には、深い優しさが染みている

 今日から月番で北町奉行所に出仕している定町廻り同心の夏木慎吾に早くも殺しの報せが届いた。 首を絞められた痕のある亡骸が大川に上がったと、下っ引きの伝吉が言うのだ。 急ぎ永代…

弱い心に縄を打つ、あの男に捕まりたい。

 定町廻り同心の夏木慎吾が殺しのあったという深川の長屋に出張ってみると、包丁で心臓を刺されたままの木場人足の竹三が土間で冷たくなっていた。 近くに女物の匂い袋が落ちていたところを見…

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