金色の野辺に唄う

『バッテリー』著者による、感涙の家族小説

 稲穂が金色に輝き、風に揺れてシャラシャラと唄を奏でる山陰の秋。  娘の奈緒子、孫の嫁・美代子、曾孫・東真、近所の花屋の店員・史明の四人に送られ、九十二歳の松恵は息を引き取ろうとしていた。   松恵は、先だった夫が今際の際に発した残酷な言葉を思い出す。  奈緒子は、だれの子だ…。 「百年近くを生きれば、全て枯れ、悟り、遺す思いもなくなり、身軽に旅立てるとばかり信じておりましたが、どうしてどうして、人間って簡単に軽くはならないようです」  多くの人の心を受けとめ救った大おばあちゃんが、美しい風景に送られ、今日旅立ちます。

小学館文庫シリーズ