佐々木裕一

この男のお縄には、深い優しさが染みている

 今日から月番で北町奉行所に出仕している定町廻り同心の夏木慎吾に早くも殺しの報せが届いた。 首を絞められた痕のある亡骸が大川に上がったと、下っ引きの伝吉が言うのだ。 急ぎ永代橋の袂まで奔り、亡骸を検めると、水草がへばりついた蝋色のその顔は、慎吾もよく見知っている油問屋西原屋四八郎の長男清太郎ではないか——。 突然の悲報に駆けつけた紙問屋三徳屋庄兵衛の娘お百合は、清太郎の亡骸にしがみつくと、顔に頬をすり寄せて、嗚咽した。そばで歯を食いしばっている四八郎によれば、ふたりは三日前に祝言を挙げるはずだったが、五日前に家を出たまま祝言前日になっても帰宅しない清太郎をみなで捜していたという。 周りが胸を痛めて遺族を見守るなか、ふいにお百合が訴えた。 「お役人様、あたし、下手人を知っています」 思わぬ言葉に、慎吾と岡っ引きの五六蔵は顔を見合わせた。なんでも、お百合は以前から不審な男に付きまとわれていたらしい。とすると、お百合を想うあまり、その男が邪魔な清太郎を殺したのだろうか。まずは女医の国元華山に検屍してもらった慎吾だったが……。 話題沸騰の捕物活劇シリーズ第二弾!

弱い心に縄を打つ、あの男に捕まりたい。

 定町廻り同心の夏木慎吾が殺しのあったという深川の長屋に出張ってみると、包丁で心臓を刺されたままの木場人足の竹三が土間で冷たくなっていた。 近くに女物の匂い袋が落ちていたところを見ると、一月前に家を出ていった女房のおくにの仕業らしい。 竹三は酒癖が悪く、毎晩飲んでは、暴力をふるっていたらしいのだ。さっそく、岡っ引きの五郎蔵や女医の華山らに助けを借りて、探索をはじめた慎吾だったが、すぐに手詰まってしまい……。 頭を抱えて帰宅した慎吾の前に、なんと北町奉行の榊原忠之が現れた!? しかも、娘の静香を連れて来ているのは、一体なにがあったのか? あいつが歩けば春風がそよぐ——気さくで、うっかり者だが、飛びっきりの優しさで、町人みなから慕われる定町廻り同心・夏木慎吾の八面六臂の活躍を描く、捕物活劇シリーズ第一弾!

小学館文庫シリーズ