相内藍

王宮の凶鳥姫
著/相内藍 発売日:2019-03-06

宿命の公主をめぐる絶品中華風ファンタジー

 遙か昔、荒涼とした大陸に、五人の神仙が舞い降りた。これが五仙大陸の始まり。そして五つの国が生まれる。東に發、西に肅、南に焦、北に幽、中央に雀。仙人の五羽の神鳥の名が国号の由来であるといわれ、この大陸では王朝が滅びる際に、青、白、赤、黒、黄——国ごとに色の異なる凶鳥が現れるという言い伝えがある。  大陸の南、焦の国王の第二公主として生まれた瑠蘭は、「夢視」の能力者によって、国に災厄をもたらすと予言された「凶鳥姫」。殺せば更なる災厄が起きるという理由で籠の鳥のように生かされてはいるが、他人の「過去」を読む能力まで持っていたがゆえに、いつも周囲に疎まれ、孤独だった。それでも瑠蘭は「いつか国の役に立ちたい」と願って日々を過ごしていた。  ある日、王宮が青い炎に包まれた。火を付けたのは前王朝を滅ぼしたとされる蒼焔だ。この凶悪な神仙に唯一太刀打ちできる力を持つのは鵬天という仙人だと知って、瑠蘭は彼が隠棲する漉冥山へ向かう。ところが、ようやく目通りがかなった鵬天は偏屈な変わり者。国の一大事にもいっさい力を貸す気はないようで……?  宿命の公主をめぐる絶品中華風ファンタジー!

気になる人と食べたい、美味しいごはん!

 都内にある出版社で編集の仕事をしている栗原綾乃は、ワケあって食物の女神様「花比売(はなひめ)」と運命共同体のような関係にある。実はかつて重度の食物アレルギーだった綾乃が、今はなんでも食べられるようになったのは、花比売が綾乃の命を繋いでくれるおかげ……なのだが、その代償として綾乃はつねにこの高飛車なグルメ女神のために、美味しいものを食べなければいけない身体になってしまったのだ。  綾乃の属する料理情報誌『食彩記』の編集者は癖のあるメンバーばかり。中でも、社長の息子でルックスも最高だが中身は最低の残念イケメン・新藤悠弥は、やたら綾乃にちょっかいをかけてくるので辟易している。でも妙なスキルの高さで綾乃をフォローしてくれたりもするので複雑……。かくして編集部の内や外で起きる食べ物がらみの事件を解決するため、綾乃は花比売や新藤とともに東奔西走。たとえば、糖尿病治療入院中の病院を脱走した編集長のために特別メニューを開発、老舗和菓子屋さんの後継者問題にからんで名物饅頭を再現、経営不振の焼き鳥屋さんに起死回生の策を授ける、等々。綾乃は早くもおなかいっぱいの予感で……!?

ちっちゃな女神様と一緒にグルメなお仕事!

 栗原綾乃は編集者だ。文芸作品の担当になりたくて憧れの出版社に就職したけれど、仕事で致命的なミスをして、有無を言わさずとばされた先は、よりによって料理情報誌『食彩記』の編集部だった。実は綾乃は重度の食品アレルギーもちで、数ある編集部の中でもここだけは避けたかったのが……。  絶対絶命の綾乃は、これまでのアレルギー人生を呪いつつ、夢うつつの境で食べ物への恨みつらみを盛大にぶちまける。するとその言葉を聞きつけた通りすがりの女神『花比売(はなひめ)』が、「食の素晴らしさを教え、改心させてやる」と綾乃に契約を持ちかけてきた。  強引な展開に困惑するしかない綾乃だったが、一心同体となった花比売のおかげか、あれほどひどかったアレルギー症状が消えてしまって万々歳。しかし自分の中に居候している女神のぶんも大量のカロリー摂取が必要しく、食べても食べても、すぐにお腹がすいて仕方がない。しかし女神は「美味しいものでなくてはイヤ」と言うし……。かくして、ちっちゃい女神様と元アレルギー体質編集者の、グルメ追及二人三脚生活が始まった!

小学館文庫シリーズ