生き物と人間の深い関わりを描いた作品集
夜の国道で道路の中央に蹲っている少年がいた。彼は、一緒に暮らしていた老人が死ぬ間際に残した言葉を守り、飼っていた蟹が海岸で産卵しようと移動するのを、命がけで守ろうとしていたのだった。それを知ったドライバーたちは、最後まで少年が見守れるように動いた。しかし、蟹と少年にはさまざまな難敵が襲いかかってくる(「妖獣鬼」)。 抜き差しがたい心情が膨れあがっての、生き物たちとの深い交わりを描きながら、「人間と動物はついにわかりあえないという断念を基調としている」(北上次郎)という、人間の孤独や哀しみの深奥に迫った、傑作動物小説集。