三遊亭圓生

噺のまくら
著/三遊亭圓生発売日:2019-03-06

喋りのヒントが満載。大名人の「まくら」集

 昭和の大名人、六代目三遊亭圓生の数々の名高座から「まくら」65篇を選りすぐった価値ある一冊。圓生落語同様、笑いの中にも品格を感じさせる、粋な話芸の世界が存分に楽しめる。 本題の噺への導入になっているものもあれば、噺を理解するための解説や伏線の役割を果たすもの、オチまでついてそれだけで一つの作品になっているものも。落語の舞台である江戸時代から、圓生が生きた明治、大正、昭和の時代までの文化、歴史、風俗、しきたりなどが、生き生きとした洒脱な江戸言葉で語られる。 下々の生活実情に興味を抱く無邪気なお偉方たちのあれこれ「大名の飯炊き」、昔の葬式の風習を笑いも含めて伝える「とむらいの作法」、チップによる遣手おばさんの対応差「吉原の祝儀」などなど。色っぽい噺も出てくるが、川柳、狂歌、都々逸などもふんだんに盛り込まれ、落語の起源や講談、音曲、義太夫の成り立ち、物事の由来などをさらりと語る芸当に、常々勉強が大事だと言い続けた圓生の教養の深さ、知識の豊富さが窺い知れる。 「へぇ〜」となったり、「クスッ」と笑えたり。そのあとに控える噺の内容を知っていれば尚深く楽しめるし、「まくら」だけでも十分に楽しめる。これぞ芸術、これこそ芸。面白くて、ためになる。しゃべりのヒントも満載。稀代の名手による、一冊丸々読む「まくら」。解説は、さだまさしさん。落語への愛あふれる解説文も必読です。

昭和の大名人が語る芸、寄席、粋な生き方

 昭和の大名人、六代目三遊亭圓生が軽妙な語り口で魅せる随筆集。噺家や落語ファンだけでなく、せわしない現代を生きる多くの人々にも様々なヒントを与えてくれる良質の伝書である。  五十八編、四部構成。芸に対する心構えを説き、芸のむずかしさ、基本や勉強の大切さなど落語の奥義を伝える「人情浮世床」。落語の歴史や寄席への思い、寄席の四季折々の風物詩などについて綴る「寄せこしかた」。圓喬、金語楼、志ん生ら噺家はもとより、同じ時代を過ごした芸人たちを振り返る「風狂の芸人たち」。好きな食べ物から着ものの着こなしにおける自説を述べる「本物の味」。  「世の中、ソロバン勘定だけでは、つまらないものになる」「基礎の出来ていない者は、そこからは絶対にはい上がれない」「逆境に陥ったときにくじけるような人間は成功しない」「何よりもまず、芸に品格があること」「銭金じゃなく、じっと我慢して、おのれ自身に芯をつくる」「イキとヤボは紙一重」——。 ときに優しく、ときに厳しい言葉で紡がれる提言の数々、“あたくしの思い”からは、芸に生きる者の覚悟が伝わってくる。

小学館文庫シリーズ