人情と道理で真実を導き、悪を成敗する!
「拙者が斬った。相違ない」 駆けつけた公儀徒目付の望月丈ノ介に、道場主の大瀬良玄蕃が淡々と答えた。倒れているのは、師範代の安井勘兵衛と門人筆頭の小川庄助だった。 大瀬良によれば、道場改築後、門戸を広げるべきと主張する安井と、少数精鋭を貫くべきと譲らない小川が言い争いとなり、逆上した安井が小川を斬り捨て、さらに己にまで刃を向けてきたという。 そこで大瀬良は止むを得ず、安井を斬ったのだった——。安井は大番組頭を辞してまで、道場創立に尽力。また、大瀬良の妹である美和を嫁に迎えている。 一方の小川は、三十俵二人扶持の御家人で、剣の求道者のようであったらしい。検分を終えた丈ノ介は、さっそく相棒の福原伊織に報告したのはいいが、「大瀬良の話を鵜呑みにしただけだ」と辛辣な言葉を投げかけられてしまう……。 御前試合で五連覇を達成し、天下無双と称賛された大瀬良をどのように裁くのか? 情に厚い剣術遣いと、抜群の知恵をもつ甘味好きの二人組が難事件を快刀乱麻する、書き下ろし時代小説!
人情と道理で悪を裁いて、弱き者を救う!
上司である公儀目付の影山平太郎から、 「小普請組前川左近の新番組頭への登用が内定した。ついては行状を調べよ」 との命を受けた、徒目付の望月丈ノ介。 さっそく相棒の福原伊織へ報告するため、組屋敷へ向かった。 二人一組で役目を遂行するのが徒目付なのだ。 正義感に溢れ、剣術をよく遣う丈ノ介と、かたや身体が弱いが、推理と洞察の力は天下一品の伊織。 まずは聞き込みをはじめた丈ノ介は、左近が文武両道の武士と知るも、双子の弟で、勘当された右近の存在を知る。 が、近隣に住む誰もが、右近について話が及ぶと口をつぐんでしまう——。 兄の左近から口封じされているのか? 勘当された事情が手に入らず、まったく探索が進まない丈ノ介は、状況を打開しようと思い切って、左近が師範代をしているという東軍流の剣術道場へ乗り込んだ。 手合わせしてみれば、おおよその人柄がわかるだろうと踏んだのだ。 事は、丈ノ介の思惑通りに運んだのだが……。 最後に大どんでん返しが待ち受ける、書き下ろし時代小説!